野良猫のひとりごと。

思いついたままに、気ままに、些細な日常やふとした思い出話を記録。

オタ姫のおもひで - no.1【前編】

f:id:nola_nolari:20180514083730p:plain<一般的なヲタ姫のイメージ(?) 

 

 長く付き合った彼氏も、一緒に棲み始めて関係がマンネリ化してくると刺激的な新しい恋に目覚めてしまう、なんてこともあるんだろうか。

 そういえば浮気行為に夢中になる人達も、情熱的な心の躍動感に飢えた結果なのかなと感じるようなことを言っていることがある気がする。だからそういう要因もあるのかもしれない。

 

 でも“あれ”については、それもあるし、欲が出ればあれもこれもになるのが人間の性なのかなとも思う。

 

 彼女とはすぐに仲良くなった。お互いにノリもあったし、すごく話も盛り上がったからあっという間に意気投合した。私は女子プレイヤー友達がかなり多かったから女子会も主催してて、そういった飲みの場にももちろん呼んで、女子トークで語り明かすこともしょっちゅうあった。

 当時同棲していた彼氏の話を彼女はよくしてきていた。一緒にゲームをプレイすると絶妙に合わないんだけどねと悩みを漏らしていることもあった。恋人とのゲームプレイについては私も同じ悩みを抱えていたから、「私もー!」と言ってお互いに愚痴りあったものだ。

 

 彼女のいるコミュニティのリーダーである男性は、私とも友人関係だった。何となく彼女といつも一緒にいるなとは思っていたけれど、私もしょっちゅう男ばっかりの環境でいつめん(絶対にいる男子が3人ほど)で集合していたから特に深く考えなかった。そんなんどこも同じだ、くらいの感覚。実際彼女は愛嬌があったから、そうでなくともまぁ人気者になるよなぁくらいに思っていた。

 そのコミュニティのリーダーは、乳飲み子もいるような既婚子持ちの男だった。おっさんというほど年上ではなかったけれど、まぁ年齢は近い方だったし、高校生も多いような若いプレイヤー層のゲームで、そこそこ落ち着きを持った成人組同士で、コミュニティの統率について折り入って話すようなこともあった。

 彼女やそのリーダーとは、普通にふらっとゲームセンターで合流して遊ぶような関係だった。でもある日、何かの拍子に、彼女たちの関係に違和感を持った。寄り添う様子は完全に恋人同士に見えたから。

 そして私はある日、知ってしまった。

 

 彼女は既婚子持ちのリーダーにすり寄って、依存して、体を合わせる関係だった。

 そう、不倫。愛人である。

 

 別に、男をとっかえひっかえして付き合うだけなら、私は友人にとやかく言うつもりはなかった。それが本人の恋愛スタイルなら、それでいいんじゃないかと思う。ただしそれは独身に限る。

 独身同士なら別にいいんじゃないと思う。でも、パートナーが公認しているなら、もしくは別に特定のパートナーがいないなら、お好きに恋愛して♂♀していいと思う。ただし独身に限る。ちなみに私は彼氏が浮気をしたら即座に分かれるし自分はパートナーがいる以上ABCどの不貞も絶対働かない派。今までにないけどどうしてもになったら別れてから。けじめ必要。

 ただ、既婚子持ちに手を出す不倫関係だけは、私はどうしても受け入れられなかった。守るべき家庭を持っている男が別の女にうつつを抜かして腰振るのも気持ち悪いし、守るべき家庭を持っている男にすり寄って股を差し出す女にも、とても嫌悪感を持っていた。

 しかも乳飲み子のいるような既婚男性の気持ちを引っ張って、引っ張って、依存して、頼って……特定のパートナーがいて同棲までしているのに、心底信じられないと思った。

 

 彼女の不倫関係を知った途端、私は彼女が急に気持ち悪い存在であるような気がしてきてしまった。

 

 彼女はそんな気持ちも知らずに、私と変わらず友達である振る舞いをしてきた。途中まで合わせていたけれど、だんだん彼女の言動についても目に付くようになってきた。

 気づいてみれば彼女の属するコミュニティの男子は、全員が完全に彼女にメロメロになっているのが見て取れた。

 自分の言動に隙を見せるのは、素なのか計算してなのかはわからない。でもあっという間に彼女の周辺の男たちは

 

男たち「世界一かわいいよ!!」

彼女「どうもありがとっ><」

男たち「うわぁぁあああ!!(歓声」

 

 という状態になっていたし、チャンスを見つけて一気にお近づきになろうとお誘いする男たちであふれかえるようになっていた。

 それに対して丁寧に「好き」と返す彼女は、「可愛い」「あざとい」「でもそこがいい」「◎◎ちゃんらしいなぁ」という言葉を受けるたびにどんどん輝いていった。

 

 考えてみれば当然なんだけれど、彼女が粉をかけて引っ張りたいのは既婚子持ちリーダーだけじゃなかった。自分のいるサークルはもちろんのこと、SNSで自分にコメントを送信してくる男、全員がターゲットだった。

 

 そして私は思い出した。そうだ、

 

 これこそが、世が持つイメージ通りの「オタサーの姫」なんだと。

 

 その中でもリーダー男は、さらっと自然な会話で「通じ合っている風」が見えるような会話をSNS上でもしていた。自分が彼女と深いつながりであるということは、彼自身にとっても誇りだったのかもしれない。

 

 だって、彼が既婚子持ちであることは誰もが知っていることなのに、彼女と一夜を共にしたことを、思わず周りに自慢しちゃうくらいだものね。

 うっきうきだったんだろうなぁ。

 

 私はそれまで、彼女の「友人としてのいいところ」しか見えてなかった。いや、見ないようにしていたのかもしれない。面倒くさがりとはいえ、やっぱり友達は大切なので、嫌いになりたくなかったのだと思う。

 でも彼女が不倫というあまり褒められた行いではないことに興じ、ある日本当にリーダーと♂♀したことが発覚した瞬間に、私の中から彼女への友情が一瞬でスゥーっと消えてなくなるのを感じた。これこそが「ドン引き」と呼ばれる現象なんだろうなぁと思った。

 嫌いになるとそれまで見えなかった嫌なところがたくさん見えてくる。逆に言えばそれらを見えなくしていた「情」の力ってすごぉい。

 耐えきれなくなって、私は彼女と友達でいることをやめた。

 

 恋愛感情を抱かれる男の量で自分の価値を確認するなんてこと、する必要あったんだろうか。少なくとも私はとても彼女と仲良くしていた。恋愛要因抜きでも、私は少なくとも彼女に好感を持っていた、つまり魅力があると感じていた。でも彼女は多くに恋されないと、自信を持てなかったんだろうか? 既婚子持ちの男に股を開くなんてことまでして。

 悲しいな。でも、私はもう友達を続けられない。--そうして、LINEもSNSも一斉にブロックした。

 

 SNSで彼女がめちゃめちゃに荒れたという話を人づてに聞いた。

 

 ただ、私も所詮、周りから人が絶えない、コミュニティを引っ張る「オタサーの姫」だ。ここから私自身がまずった。

 

 取り巻きを使って何かをする、という行為のなれの果てがどういうものかを、私はよく知っていた。かつて私の親友が一人、オタサーの姫に本当に追い詰められたことがあったから。

 

 私は周りにいるメンバーたちに何かを特別命じた訳ではない。

 私がしたのは、メンバーに「どの人物がどういうことをしたのか、いかに男たらしであるか、こういうタイプの女には気を付けなよまじでめんどい」ということを会議通話で詳細に伝えたことだった。

 彼等はもともと、自分のサークル外には興味のないメンツだった。それを伝えた私にメンバーは「外はやばいやつらが多いんだから」「もう引っ込んでうちだけにしとこうよ」「あんま他所とは関わらない方がいいかもね」というような反応だった。実際そうだと思った。

 ただ身内が彼女のSNSアカウントを見に行って、容姿や発言を一つ一つ揶揄し始めたのを見て、「私もあの人たちと同じことをしているのでは」と思ってしまった。

 だって結果的に、仲間は彼女をバカにする≒攻撃するようになったのだから。

 

 また、私がSNSで深く考えず「地雷だわ」と彼女をさして発言した。「サークルメンバー、みんなにお話したいことあるから通話するよ」ともSNSで言っていた。流れからしても明らかに彼女の話題であると、彼女自身も思っただろう。

 褒められた行為をしたわけでない自覚は彼女にもあったと思う。それがどんな範囲であれ、他の人たちにバラされるのだと私のSNSを見て彼女は知ってしまった。しかもその上、仲の良かった私に「地雷だ」と言われていたのだから、普通に考えて相当ショックを受けたと思う。

 

 ただ当時の私は、「それだけのことをしたんだから嫌われることを知ってほしい」という偽善者的な思考を持っていた。自分の行為が許されなかったこと、それは友人を失うことであるということを知ってほしいって。今思えばとても傲慢な考え方だなと思う。

 結果的に彼女はショックを受けただけだった。それ以外はなかった。

 それをネタにひどく落胆して、所謂「病みツイ」を流し、自分の周りの取り巻きに慰められに行っただけだった。

 

 そして彼女は、思いもよらない方向へと進んでいったのだった。